全能のハンコ

Jul 15, 2020

全能のハンコ

私は日本に来たばかりの頃、あらゆる所でいつも驚かされました。

その一つは、日本人は小切手をほとんど使わないということでした。

しかし日本やアジアの他の地域では、小切手よりもっと古いものを今でも使っています。

それは印鑑といいますが、一般的に「ハンコ」とも呼ばれています。

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私の印鑑は名前の最初の3つのイニシャルを刻みました。会社の印鑑は、会社の名前を精巧に彫刻したもので、複雑で複製しにくいデザインです。

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日本では、公の手続きのために印鑑が必要です。例えば、銀行口座を開設したり、役所に行って婚姻届を出したり、生まれたばかりの子供の出生届を出したりと、何かと印鑑が必要です。

初めはこれらの印鑑がどのように使われているのか、とても不思議でした。

私の友人だった隣人の農夫の悲しい物語があります。その農夫は農業だけでなく、廃品回収業も営んでいました。そしてその勤勉な働きで、彼は銀行口座に大金を貯蓄しました。しかし年老いてきたので、財産一切の管理を、たった一人の孫に譲りました。さて、その後どうなったと思いますか?ある時その勤勉な農夫は孫に、管理を任せた財産の一部から自分等の生活費を渡すように電話で依頼しました。しかし孫は「銀行にはもうお金が残っていない。」と言いました。一体全体、預けた1億2千万円はどこに消えたのか?信用していたその孫とその孫の父親(農夫にとって義理の息子)は競馬が趣味でした。そしてこの二人は何と1億2千万円分も競馬に費やしたのです!残念なことに、当時の私の古い友人の農夫は、一生質素な暮らしのまま、失意のまま病気で亡くなりました。そしてこの孫はその後も、家業のスクラップを回収する毎日です。

競馬

実際に通帳と印鑑があれば、口座名義本人じゃなくてもお金を下ろす事ができる訳で、印鑑の力は本当に大きいのです。

企業では、社員の個人の印鑑もよく使われますが、そのせいで、度々お役所仕事的な問題につながることがあります。

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例えばある企業の例を見てみましょう。あるプロジェクトを次の段階に進めるためには、5人、6人、あるいは7人の個人の捺印が必要になる事があります。もし、この中の一人でも、何らかの理由や反対意見の為に捺印しなかった場合、その書類とプロジェクトはそこで頓挫してしまいます。

このように、印鑑の使用は非合理的に見えるかもしれませんが、逆の側面もあります。プロジェクトの全員が合意に達しなければならず、彼らが団結して次の段階に入ることができるように、反対意見の同僚を説得しなければならないからです。

TwistTheArm

全員が納得してプロジェクトを運営する事で、結果的に意識が高まり、会社や同僚との一体感と結束力を感じるようになります。

Victory

更にハンコを捺印するという事は、その捺印をした人の責任がその文書に生まれ、後々まで残るのです。

残念なことに、この絶対的なハンコは、テレワークが拡大する今の新しい状況下の会社内では必要が無くなってくるでしょう。テレワークの際はハンコを逐一もらうのが難しいでしょう。

私は、この美しい印鑑が好きです。日本の公文書に印鑑をというユニークな方法で取引を楽しんでいます。

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