私の奥様は魔女だったのです
私の奥様は魔女だったのです
私の妻は、異世界からのあるものを呼び覚まし、現実の世界で目に見える物へと、いざなう特別な力を持っています。それにはある特定の秘密があります。
私の妻が魔女の力を持っているのでは?と最初に感じたのは、あることがきっかけでした。彼女はある方法によって、私達夫婦に美しい黒い猫をもたらしたのです。
ことの始まりは2014年の夏でした。
妻は私の希望で、庭のデッキに飾るための、大きなパネルに絵を描きました。何を描くかは妻に任せのですが、彼女は、草花と、黒猫が一匹、そして英語で”ウェルカム”という文字を書く事も忘れませんでした。
それから数ヶ月後、同じく2014年10月のある日、隣の街に住む私の友人ジェームスは、お腹を空かせて弱っていた、一匹の黒い子猫を自宅近くの駐車場で発見します。
とても賢いその子猫は、ジェームスがとても優しく、動物が好きな人だと分かったのでしょう。僕を助けて下さいと言わんばかりに、ジェームスの足元に飛びついて離れなかったと言います。
人懐っこい黒い子猫に運命を感じたジェームスは、猫を自分の家に連れて帰りました。
ジェームスと彼の奥さんは、子猫の体を綺麗にして、獣医さんに診せた後、里親探しのために、SNSに動画を投稿しました。ジェームス夫妻はこの時すでに、3匹の猫を飼っていた為、泣く泣く新しい子猫の飼い主を探したのです。
そしてその動画を見た妻は、一目見てその黒い子猫の可愛らしさに、たちまち一目惚れし、「この子を私達の子にしましょう。」と私に持ちかけました。
私はすでに妻が以前から飼っていて、結婚する時に私のところに連れてきたばかりの、気難しいメスの三毛猫との相性を考えて、まだ次の猫は時期尚早じゃないかと思ったのでした。しかし最後には妻の熱意に根負けし、とうとう子猫を見にいく事になったのです。そして私も、ジェームスの家でこの腕にその子猫を抱いた瞬間、私達の子供だと確信したのです。
私達は、この最も美しく素晴らしい黒い子猫に “パンケークス “と名付けました。
ここから私がなぜ、私の妻を魔女と呼ぶのかという本題に入ります。
パンケークスが我が家に来た翌年の、2015年の冬、老朽化が進んだウッドデッキが台風で壊れた時に、黒猫が描かれた絵も一旦デッキから外す事になりました。もちろん私は、パンケークスがここにたどり着いた記念の絵として、残しておきたいと思っていました。
ところが、朽ち果てたウッドデッキの残骸を燃やしていると、日出ずる国の白魔女、すなわち妻が突然、この素晴らしい芸術作品を炎に放り込んでしまったのです。そしてその絵を灰の山にしてしまったのです。
う~む。この話をどう思いますか?
私は魔術の専門家ではありませんが、魔術の為に描いた絵の中の黒猫と、現実となった黒猫パンケークスが同時に存在する事は、魔術界では禁止されている様です。
そして妻はこう言いました。「美しい黒猫のパンケークスが、私たちのところに来てくれたのだし、絵は単なる物なのだから、もう無くてもいいでしょう。」
確かにパンケークスが私達の家族の一員になってから、私達の生活は様々な面でかなり良くなってきました。
そしてその魔法は、日に日に私達に影響を与え続けています。
日出る国の白い魔女・私の妻へ。私達の守り神、パンケークスを呼び覚ましてくれて、本当にありがとう。
そして、私たちと一緒に、家族として生きていくことを選んでくれた、パンケークスにも深く感謝。