箸とフォーク
箸とフォーク
西洋と日本の食文化の違いを見ていると、あまりにも対照的な事にいつも驚かされます。
パーティーの出席者がナイフとフォークを使って食事の際、炙った肉をフォークで突き刺し、荒々しく口に持っていく様を想像してみて下さい。
一方、和食をいただく時には、一口サイズに切り分けられた上品な大きさの肉を、箸で優雅に口へ運びます。
食をめぐる概念は文化によって根本的に異なり、それは食事をする道具にも反映されています。
伝統的な西洋スタイルでは、食事はすべて自分用の一つの皿に盛られていて、社交性よりも食べることに重点を置いて、短時間で食べ終える傾向があります。
それに比べ日本では、一緒に食事をする人同士の一体感が求められる事が一般的です。例えば、大皿に盛られた刺身の盛り合わせをみんなで突き、夜の食事はパーティーのように長い時間をかける事も珍しくないでしょう。
箸の使い方は、日本人の精神的な領域でも重要な役割を果たしています。
あなたが日本に来る時、または日本人の前にいる時、今からお知らせする重要な箸のルールを必ず守ってください。
まず、食べ物を自分の箸から人の箸へ渡す事は絶対にしないでください。
日本では火葬されると、遺骨がのせられた台の周りに遺族や親族が集まり、二人一組でそれぞれ専用の長い箸を使い、遺骨を骨壺に納める風習があります。これを「箸渡し」と言います。ですから二人の人間が箸と箸で同じ食べ物を掴むことは、縁起が悪くマナー違反なのです。遺族が遺骨を骨壺に納め終わると、火葬場の係員が頭蓋骨を骨壺に納め、全体を押し込めるのを見た事があります。その時は、更にその上に、お骨の主の亡くなったおじいさんのメガネを入れ、蓋をして封印していました。そして美しい飾り紐が付いた専用の布のカバーに骨壺を入れ、遺族はそれを一旦自宅に持ち帰ります。
ですから、食べ物を自分の箸から人の箸へ渡す事は絶対にしないでください。
また、お茶碗に盛られたご飯に、自分の箸を真っ直ぐに立ててはいけません。
亡くなったばかりの仏様に線香をあげる時には、お茶碗に山盛りのご飯を入れ、そのご飯に一膳の箸を真っ直ぐに突き立てるのです。
これは諸説あるのですが、故人がご飯を食べる時に箸を探さなくてもいいようにというのが有力です。
日本人と一緒に食事をする際、箸を休ませる際にやりがちなので気をつけましょう。
次に、誰かに箸先を向けたり、話している間に振り回したりすることは、非常に悪いエチケットであり、やってはいけないということを常に気にするべきです。
話しながらナイフとフォークで誰かを指差している人をどう思いますか。この点では箸もフォークも共通していると言えますね。
1969年に来日した父が、家族全員の箸と箸置きをお土産に持ち帰ったのを覚えています。(父の帽子が日本に帰ってきた!のブログはこちら)
箸の正しい持ち方や使い方は、「ダットサンの部長に教えてもらった。」とのことでした。
そして、私はその父から正しいお箸の使い方を教えてもらいました。ですから私は6歳からお箸を使っています。
30年以上ここ日本に住んでいるので当たり前の事なのですが「あら、あなたの箸の使い方はとても上手ですね。」と褒められます。そんな時私は敬意を表しながら「あなたのフォークの使い方も素晴らしいですね。」と答える事にしています。
日本を訪れる時には、正しい箸の持ち方とエチケットを学ぶことを強くお勧めします。