芝刈り農家のお嫁さん
芝刈り農家のお嫁さん
日本の農家のお嫁さんは、畏敬と尊敬の念を持って見られるべきでしょう。
人生の大半を日本の田舎で暮らしていると、勤勉な日本人と接する機会も多々あります。
私の家の目の前の田圃の持ち主とは、長年のお付き合いがあります。
この農家は、私達のコミュニティーの中で、かなりの政治力を持っています。
主人は日本のバブル期に、農作業の他に、一族を引き連れて大都会に通い、道路作りに従事しました。この賢い農夫の金庫は、さぞ潤沢になったことでしょう。
日本の農家を特に尊敬する点は、日本人のDNAに刷り込まれている「謙虚さ」を基礎とした「豊かさ」だと感じます。
この一家は、道路建設で巨万の富を築いたにもかかわらず、決して派手に他人に誇示することはありませんでした。
そして、この一家の奥さん、花江さんには、いつも感心させられます。
マギー・メイと同じ年の82歳で、機知に富み、ユーモアのある女性です。
花江さんの人生の旅は、隣町から、ここの農家に嫁として送り込まれたことから始まりました。
その当時は、自分達で結婚相手を決めることは珍しく、花江さんと農夫の夫も、お見合い結婚でした。
夫の母親は、新妻をひどい目に遭わせる、どの世でも怖い存在ですが、かつての日本は最たるものでした。「姑(しゅうとめ)」と呼ばれます。
姑という強烈な響きが、日本の女性にどのような心理をもたらすか、興味があります。
ある時、私のお気に入りの、とても美味しいインド料理店の、ヒンディー人の店主と、ある話をしました。その時、面白いことに、アジアの他の国でも、お見合い結婚が一般的だとことが明らかになりました。東洋の伝統が、大アジアの多様な文化や社会に、しっかり根付いていると感じました。
店主の住むインドの町では、95%がお見合い結婚で、彼も御多分に漏れず、インド人の伝統的なお見合い結婚だったそうです。
「一族の存続と家門の継承のために、親は何がベストかを知っているのだから。」と、店主がヒンズー教と日本人の考え方の深い共通点を教えてくれました。
さて、先程の花江さんは、農家を切り盛りするだけでなく、82歳にして芝刈り機を巧みに操ります。
そして更に驚いた事に、花江さんは、朝夕の愛犬の散歩も欠かしません。私が時々散歩をしていると、可愛い柴犬を連れた花江さんを、よく見かけ、立ち話に花を咲かせます。
田んぼの周りの雑草を手際よく刈っていき、収穫時の邪魔になる物は、全て刈り取ります。そんな勤勉な農家のお嫁さんを、日本全国で見かけることができるでしょう。
花江さんの体力と、その回復力は、酒を飲まず、米、野菜、魚という日本の伝統的な食生活を続けてきたことに、起因しているのだと思います。
花江さんは、日本の農民の模範的な姿で、とても尊敬に値する人です。そんな隣人がいることを、私はいつも幸せに感じます。