言葉は概念である:「さん」と「ミスター・ミセス・ミス」
言葉は概念である:「さん」と「ミスター・ミセス・ミス」
日本の社会的慣習の中には、慣れるまでに時間がかかることがほとんどですが、私には特に後味が悪い経験があります。
相手の名字や名前の後ろに敬語の「さん」を付けないという小さな不注意が、それほどまでに相手の怒りや不快な争いを引き起こすとは思いもしませんでした。たとえそれが私にとって「友好的」な意味があったとしても。
日本人が相手の名字や名前に敬語の「さん」を付けて呼ぶという古くからの習慣は、外国人にとっては些細なことのように見えるかもしれません。
しかし、外国人がこの非常に重要な社会的慣習についてどう思うかは、全く意味がありません。
誰かを名前で呼ぶ時に「さん」という敬語をつけることが、いかに絶対的で重要であるかという事を認識しなくてはなりません。
「さん」を付けて呼ぶこの習慣は、日本文化の中であまりにも自然に行われているため、敬語の本来の意味が無い様に感じる時もあります。
しかし公式な場で、後輩でも家族でも友人でもない相手に「さん」を付けづに呼んでしまうと、間違いなく礼儀知らずとみなされます。
また、親戚の人に対しても注意が必要です。
昔、前の妻の親戚の結婚パーティーに参列した際、年老いた妻の叔父ともっと仲良くなろうとして、彼の名前を呼び捨てで呼んでしまいました。もっと悪い事に、私は彼を姓ではなく、名前を呼び捨てで呼んだので、それはさらに彼のプライドを傷つけ、事態を悪化させました。
この「事件」は妻の家族内で大きな問題となり、それが忘れ去られるまでにはかなりの年月がかかりました。正直言って一旦浸透したダメージは、長い間回復することが難しかったのです。
全く悪気も無く「さん」という敬称を誤って省いただけなのに、なぜこの伝統的な農家の家でこれほどまでの騒動になってしまったのか、その当時の私には理解ができませんでした。
しかしもしかすると、この年老いた義理の叔父は戦時中に東京の上空から飛行機によって爆弾を落とした白人に対する記憶が偏見となり、その時まで根強く残っていたのかもしれません。
この様な重要な礼儀を守らないと、日本人や日本文化を軽視しているとみなされることがある事を忘れないで下さい。
外国人の中には、ほぼ対等な立場にある同僚に「さん」を付けずに姓を名乗ってほしいと頼む人もいますし、非公式な場で呼び捨てにし合う日本人もいます。
しかし、ほとんどの日本人は「さん」を付けないことに違和感を感じ、どうしても「さん」を付けたがります。以前に経験した私の「事件」から時が経った今、私にはこの重要な社会的慣習を守る理由が明確になってきました。
これは私たち外国人が「バタ臭い野蛮人」と思われないよう、親愛なる読者の皆さんのためのアドバイスです。
全ての人が不幸にならないために、相手に必ず「さん」を付けて呼びましょう。