日本のことわざの知恵

Dec 2, 2020ブログ, 文化, 語学

日本のことわざの知恵

ことわざは、それぞれの文化に根付いており、しばしば社会の哲学や、深い心理の源を表しています。

古くから伝わる日本文化は、その昔から、高度に洗練し続けてきたため、特に「ことわざ」が豊富にあるのが特徴です。

さらに、日本のことわざの豊かさは、神道、仏教、道教、禅宗の影響に由来していますが、これらの宗教は、キリスト教のような若くて未熟な宗教と比べて、哲学的にも深いと感じます。

より深いことわざは、すべての古い文化にも見られます。これは、人種や文化の違いも関わらず、人類の普遍性を表す明らかなサインです。

ここで、いくつかの日本のことわざと、その思考の語源をご紹介します。

(1) 実るほど頭を垂れる稲穂かな 

立派な人ほど謙虚である

稲が成長すると実がたわわになり、その実の重さで稲の穂(頭)が垂れ下がるので、立派な人ほど頭が低く、謙虚であることを意味しています。

私はある時、仲の良い医師である友人と、日本の田舎の美味しい刺身を出す料理屋で、カウンターに座っていました。すると私たちの横に、三人の男性が座ってきました。そして、お酒が進むにつれ、彼らと世間話をするようになりました。若い二人の男性は少し傲慢な感じがしましたが、年配の男性は謙虚な態度だったのです。会話の途中で名刺をもらうと、若い二人は下っ端の官僚で、もう一人の年配の男性は、この田舎町の市政の要職に就いている人物だと分かりました。三人が店を出た後、私の友人である医師が、この大切なことわざを教えてくれたのでした。結城先生、知恵と友情をありがとうございました。

Rice Stalk

(2) 七転び八起き

人生には浮き沈みがある

誰もが例外なく、人生の節目を経験するはずです。60代で、大手石油会社から訴えられ、家も含めて全ての物を失った父を見た私にとって、このことわざは、特別な意味を持っています。他人からは、その時の出来事は、私の父の人生の終わりに思えたかもしれませんが、父は立ち直り、ユーモアのセンスも忘れませんでした。ちなみに父は、2020年に無事、85歳の誕生日を迎えることができました。「父の帽子が数十年ぶりに日本に戻ってきた」についてはこちらをご覧ください。父は、かつて、貧困から抜け出し、私たち家族の豊かな暮らしのために、並外れた苦労をしてきました。挫折した後に、何をすればいいのかと悩んだ時には、もう一度立ち上がって自分のビジョンに向かって進むこと、それが人生を有意義なものにしてくれるのではないでしょうか。

Life's Ups and Downs

(3)千里の道も一歩から

どんなに遠い旅に出る時も、最初の一歩から始まる

何か新しい事をスタートするということが、一人生の一番の難関でしょう。目の前の道は不確かで、行き止まりや危険があちこちに潜んでいます。しかし、時には特別な経験、教師、無数の神々、聖人、天使たち、名も無い善意の人間が導いてくれるかもしれません。それでも尚、なぜ人は最初の一歩を踏み出せないのでしょうか?自分を信じ、未知の世界に一歩を踏み出す勇気を持つことこそが、人生の基本なのです。そうです、今日から第一歩を踏み出しましょう。

Every thousand mile journey starts with the first step

(4) 親孝行をしたいときに親は無し

子供が親に感謝の気持ちを持ち、親孝行しようと気づく頃には、親は亡くなってしまっている

日本人は、生まれながらにして義務を負っていますが、親孝行ほど重要な義務はありません。孔子の教えに根ざし、親を敬うことは非常に大切なことだと考えています。先人たちの苦労は想像することはできません。伝統を守りながら、先祖から受け継いだ、名誉や遺産を守る努力をしている一族は、とても尊いと思います。

filial piety

(5) 災いを転じて福となす

災いを逆手にとり、幸運に変える

日本は災害大国として知られています。台風(最近ではメガ台風とも呼ばれる)、火山の噴火、津波、頻繁に起こる地震を考えると、この不幸なレッテルを貼られても仕方がないのかもしれません。しかし日本人はすぐに復興に向け、ストイックに立ち直る民族であり、災害は人間の経験の中では当たり前のことだと受け入れてきたのです。私はいつも、日本人の災害時の団結力に、感銘を受けます。

Good Fortune

日本語には、哲学的で意味の深いことわざが無数にあります。その中に潜む教訓を体得すると、二度と戻れない別の次元の扉が開き、その日本語の奥深さが、他とは違う世界へと誘ってくれるでしょう。