右脳・左脳 – パート5

右脳・左脳 – パート5

右脳・左脳 – パート5

右脳・左脳 – パート5

日本人の重要な文化的特性として、理性よりも直感を優先させるという事があります。

日本人の歴史の中には、個人や集団、さらには国家の運命を左右するような事件が数多くありますが、それらの重大な決断は、理性ではなく直感に基づいて行われていたと言えます。

intuition versus logic

ましてや地位が高く、権力を持っている人ほど、直感に頼ることが多かったのではないでしょうか。

ソニー井深大(いぶか まさる)と盛田昭夫(もりた あきお)は、家電製品の未来を予見していました。

ほとんどの家電は、元々アメリカで発明されたものですが、日本に輸入された時、技術を直感的に未来に向けて再構築するという、日本人の生来の能力が発揮されるのです。

Are you KY

トランジスタ式放送用ラジオ受信機は、まだ始まったばかりの日本の家電業界に対する、その後の直感の対象となりました。

この作品とも言える家電は、ソニーのおかげで広く家電業界にトランジスタの可能性を知らしめることができたのです。

史上最強のアイスホッケー選手、ウェイン・グレツキー(これも並外れた直観力の持ち主)はこう言っています。

I skate to where the puck is going to be, not to where it has been

「パックがどこに行ったかではなく、どこに向かうのか。」→ パックとは?

この不朽の名言を常に心に留めておけば、直感で未来を見通すこともできるようになるでしょう。

私の日本においての人生の中で、最も早い時期に学んだ特別な言葉があります。

腹芸

しかし、若い人たちとの会話で「腹芸」と言っても通じないかもしれません。日本のミッキーマウス化の影響もあって、この文化的に重要なコミュニケーションツールがどんどん薄れていっているような気がします。

あなたは「直感 」というものを感じたことがありますか?

もし感じた事があるのでしたら、その感覚を思い出して下さい。

「直感 」により、この不思議な日本のコミュニケーション・プロトコルに同調し、日本のコミュニケーションにおける直感の重要性を理解する事で、高いレベルで日本人と関係を持つことができるのです。

「腹芸」とは、文化的テレパシーであり、共通の知識や経験に基づいて人々の間でコミュニケーションをとることができるということです。 

Interesting Facts About The Land Of The Rising Son

これについては、「日本のテレパシー:以心伝心」という記事で紹介しています。

もう一つの重要な言葉は「直感」ですが、直感という言葉の重要性は日本人にとって、西洋人とは比較にならないほど深いのです。

日本人はいまだに厳しい文化的プログラムによって、かなりの程度まで均質化されています。

同じ信念と行動様式を植え付けられ、その結果、日本人は同じように考え、同じように行動するようになっています。

実際、今でも日本人の態度や行動には伝統的な日本文化の力が色濃く残っており、集団生活の中では「日本流」の反応をすると考えることができます。

つまり、日本人は、ほとんどの状況において、他の人が何を考えているのか、どのような行動を取るべきなのかを、識別可能な日本の伝統的な価値観に基づいて直感することができるのです。

このように、日本の非言語的コミュニケーションでは、「空気」と呼ばれる「直感」が重要な役割を果たしています。

日本独特のコミュニケーションに慣れていない人が直面する問題の一つは、ある反応が直感に基づくものなのか、それとも理性に基づくものなのかを見極めることです。 

一般的に、直感による反応は、日本人の伝統的な考え方を反映したものであり、日本社会の集団的な見解にも見られます。

一方、純粋な理性に基づく反応は、個人の意見や立場を反映したものであり、集団の意見を代表するものであるかどうかはわかりません。

日本社会が円滑に機能するためには、やはり集団の意見が重要であることを覚えておいてください。

Geisha among the Cherry Blossoms

形式ばらない会合や、同僚との飲み会のような非公式なビジネスの場では、個人的な意見も認められますが、集団の意見の重要性を無視してはいけません。

日本人の直感には多くの知恵があり、それを理性と結びつけることで、議論や問題に対してより包括的な答えや解決策を導き出すことができます。

この多面的で急速に変化する世界に上手く乗るために、自分の理性的な思考に直感の要素を加えて、より高いレベルの気づきを得てはいかがでしょうか。

The power of one's own intuition

おまけ:日本人のお腹に対する独特の考え方については引き続き「虫が教えてくれた」というポッドキャストでご紹介しています。

右脳・左脳 – パート4

右脳・左脳 – パート4

右脳・左脳 – パート4

右脳・左脳 – パート4

ファジー・シンキングとリニア・シンキングについて考えたことがありますか?

日本的な考え方の核となるものは、ファジーシンキング、あるいはホリスティックシンキングと呼ばれています。

Fuzzy thinking

この思考は、世界中のほとんどの国が採用している直接的な思考法とは大きく異なります。

日本は韓国人や中国人と文化的な親近感や類似性を持っていますが、これらの類似性は、社会的発展の非常に早い段階で、原始的な韓国人、そして原始的な日本人が中国文化の多くの側面を取り入れたことによって生まれたものです。

明らかに日本は、独自の文化的本質を保持しており、これにより日本人は、中国人や韓国人とは明らかに異なる存在になっているのです。

ここで一つ持論です。

一般的に世界は東洋と西洋、東洋と西洋の二つに分けられます。

この二つの文化は白と黒と言ってもいいほど違います。

しかし、虹色や神々しいまでの文化と言えば?

Grayscale Paper

そうです。三つ目の文化、それは日本の文化なのです。急速に変化するこの世界が微妙なバランスを保つために、日本人のようなホリスティックな右脳的思考が大切なのです。

日本文明

東洋文明

西洋文明

大昔、大東亜共栄圏を作ろうとした日本の試みは失敗に終わったのですが、技術を吸収し、改良し、革新する日本人の能力が、21世紀初頭まで日本が世界第2位の経済大国として急成長する上で、重要な役割を果たしたことは間違いないでしょう。

The Greater East Asian Co-prosparity Sphere - when total empire met total war

日本人の自然な傾向は、すべての物事を全体的な視点から見ることであり、特に技術の使用と関連する美的要素に適用される場合には、確かに貴重な財産となります。

日本人は、合成紙、乗用車、ポルトガルのアーキバス(手銃)など、輸入された技術を理解し、複製し、改良するという神秘的かつ、高い能力を生まれながらにして持っています。

右脳の影響は、日本の美術工芸品、建築、庭園設計への体系的なアプローチや、日本人の日常生活の中に織り込まれた美的感覚として見ることができます。

Japanese Woman Bowing to the Land Of The Rising Son

また、日本人は右脳が強く働いているため、事実や論理に基づいて物事を考えることを嫌う傾向があります。

日本人は、直接的で純粋な論理的思考を、冷酷で残酷な反人間的なものと考えていることは間違いありません。

確かに、日本人が最も理想とするのはヒューマニズムがある人間像なのです。

What Is Secular Humanism

私たちの世界にも、もう少しヒューマニズムが生まれれば、私等の子孫の未来はもっと良いものになるでしょう。

来週も右脳と左脳の旅「日出ずる国」に、どうぞお付き合い下さい。

右脳・左脳 – パート3

右脳・左脳 – パート3

右脳・左脳 – パート3

右脳・左脳 – Part 3

日本文化における右脳優位の影響は、日本人の深い価値観、動機、行動にまで及び、日本における生活の、あらゆる側面を網羅しています。

日本の美術品や工芸品、新しい革新的な製品を生み出す際の細部にまで及ぶ拘り、そして日本という国全体のオーラに、右脳思考の影響を見ることができます。

Circular Rainbow Sun Halo

それは料理の盛り付けなど、普段のちょっとした生活の中にも通じるものがあります。

実際、日本の宴会の席で、芸術的ともいえる綿密な準備、緻密な美しい盛り付けをされた料理を出された経験をしたことのある人は少なくないでしょう。そして今これを読んで頷いている事でしょう。

washoku example

基本的に、日本文化における右脳の優位性が身体に及ぼす影響はポジティブなものなのです。日本人も、そして外国人でさえも、日本や日本道の概念を理解することができるのがその証拠でしょう。

興味深いことに、日本人同士が交流する時には、同じ文化的領域に存在しており、左脳的な態度や行動と相反する右脳的志向の側面は、確立されたコミュニケーション、寛容、協力というプロトコルによって制御されています。

更に日本人は、左脳が支配的で、右脳的な思考や行動を文化的に受け入れられない人達を相手にする時、誤解や摩擦が起きるのを避けられないでしょう。

これは、左脳派の人々が文化の違いに鈍感だったり、気が付かない振りをした場合に顕著に現れます。日本人を相手にする際にはとても注意を払うべきなのです。

Commander Perry Black Ship - ペリーの黒船

1870年12月29日にアメリカから来日したウィリアム・エリオット・グリフィスは、日本の開拓者の一人です。

グリフィスは、1870年12月29日に初来日し、日本の奥地(福井)で生活しながら教鞭をとってきたのですが、日本の本当の生活を知ると、自分が幼い頃から教えられてきたことに疑問を持つようになりました。

彼は1871年、以下のように綴っています

「なぜ、私たちは日本人とは逆のことをするのか?」

「我々が逆なのか、彼らが逆なのか?」

日本人は我々を逆だと思っています。

日本人は 、英語の筆記体をカニ歩きの様だと表現しますが、それは 日本語と「逆になっている 」からです。

日本人が西洋の本を見ると、上から下に向かって滑らかに、正しく流れる日本語とは相反して、文字がカニのようにページを横切っていると感じるのです。

日本人は馬小屋に馬を入れる時の向きも違う。

日本のネジは逆に締められている。

彼らの錠前は左に、我々の錠前は右に回る・・・。

西洋人は敵を傷つけるために人を殺し、日本人は敵を怒らせるために自分が死ぬ。

どの民族が左利きなのか?

どちらが本当の正なのか、それとも負なのか?

真実とは何か?

William Elliot Griffis

グリフィス氏は、日本が250年の鎖国を経て開国した直後、純真な西洋人だった彼は、右脳的思考の日本人の目の前に晒されたのです。

また、パトリック・ラフカディオ・ハーン小泉八雲)の著作、特に1904年に出版された『日本、解釈の試み』という重要な本にも同様の見解が示されています。

Patrick Lafcadio H - 小泉八雲

この明治維新期の日本に関する重要な歴史的解釈は、こちらから無料で読むことができます。

Japan, an attempt at interpretation

ウィリアム・エリオット・グリフィスの上記の歴史的文章、パトリック・ラフカディオ・ハーンの読書、そして私の30年以上に渡る日本の田舎での生活から得た実体験に基づいて、右脳・左脳理論の有効性を確認することができます。

旅をする時、そして日本人と交流する時、また日本人の中で生活する時、自分がどちらの脳を使っているのかを常に念頭に置いておく事をお勧めします。

来週は、右脳と左脳の対照的な考え方や生き方について、深く掘り下げてみたいと思います。

右脳・左脳 – パート2

右脳・左脳 – パート2

右脳・左脳 – パート2

右脳・左脳 – パート2

1970年代の角田忠信博士の研究によると、日本人と外国人では脳の半球の優位性に根本的な違いがあることが分かりました。 レトロファッション 1970 その違いは母国語の違いによるものであるのだということです。 さらに驚くべきことに、角田氏は常に右脳を優位にする言語が2つしかないことを発見しました。それうは日本語とポリネシア語だけなのです。 音楽家でもある角田博士の研究によると、脳のどちらが優位になるかの秘密は、その言語の音が調和的か非調和的かによって決まるとの事です。 日本人の脳 その結果、日本語は調和的な言語であるために右脳が使われ、他の言語は非調和的であるために左脳が使われるのです。 日本人は、世界で唯一の右脳中心の思考を持つ、大規模な集団であることで有名で、そしてユニークな存在です。 30年以上に渡って日本人の精神と魂を観察してきた、私のような外部の人間としては、日本人が右脳と左脳の両方の洞察力と、エネルギーをすべての努力に適用する能力を持っていることが、貴重な文化的特質であると考えます。 一方、日本文化には並外れた感情的な性質を持つため、調和のとれた人間関係を維持するのは、複雑で時間がかかるという右脳のマイナスの側面があります。 Emotional Intelligence The Japanese Way 実際、日本人との調和のとれた関係を維持するのは難しく、この難解な文化と社会をうまく乗り切るためには、常に細心の注意を払わなければなりません。 これは日本人が、感情的に複雑でない文化を持つ人々と、関係を維持しなければならない場合には尚更です。 日本の複雑な上下関係の中で、適切な人間関係を維持することの難しさは、私は何度も経験しています。 日本の文化に同化し、日本の右脳的な考え方を理解するために避けられない成長の痛みを経験することで、貴重な、そして多少の痛みを伴うとしても、多くの教訓を得ることができるのです。 1870年から1890年にかけての日本の工業化の中で、日本の近代化のためには、左脳的な意思決定と行動の発達が必要でした。 第二次世界大戦で日本が敗れた後、アメリカの大衆文化が輸入されたことで、右脳文化はさらに侵食されていきました。 実際、この30年間に日本人の間では、右脳型の日本人が左脳型の思考に汚される事が多くなってきました。 これは、「アメリカ文化」というものが存在するとすれば、それが絶え間なく浸透していることに起因していると考えられます。 しかし、この侵食のプロセスは、まだ日本の文化や精神の核心にまでは届いておらず、日本語はほぼ無傷のままで、生まれたときから右脳にプログラムされ続けているのです。 ここ数十年の間に、日本人の多くが英語に馴染んできた訳ですが、その結果は様々でしょう。 Confused Japanese 日本人の左脳に英語が刷り込まれれば刷り込まれるほど、日本人は左脳的な思考や行動に切り替えられていくのです。 しかしながら、多くの日本人にとって、英語を話したり聞いたりすることは、特に言語能力が高くない場合には疲れるものです。 このことは、私の特別な配偶者もその一人です。彼女は英語を学び始めたのがかなり遅かったので、今でも英語は疲れるだけでなく、うるさいと感じているでしょう。 確かに、日本の文化の中心は右脳であり続けるでしょうし、それはこの変化する世界では利点になるかもしれません。 来週は、日本人の右脳について更に詳しくお話ししましょう。 Peak into the right brain of the Japanese
右脳・左脳 – パート1

右脳・左脳 – パート1

右脳・左脳 – パート1

右脳・左脳 – パート1

もう何年も前のことになりますが、日本在住の作家のボイエ・ラファイエット・デ・モンテが書いた「何故日本人は優秀な人々なのか」という本を読みました。

ボイエ・ラファイエット・デ・モンテ氏は、「和」「根まわし」「改善」「建前と本音」「渋い」「わびさび」などの日本ならではの言い回しを西洋に紹介した最初の作家の一人であることを覚えておいてください。

Boye De Mente eclectic author on Japan a LOTRS favorite

この本に書かれていることの多くは大変興味深く、特に30年以上日本の文化や社会に浸ってきた私にとって、とても真実味のあるものでした。

日本人のDNAには、「気が進まない」という気質が組み込まれています。そのルーツは古代日本の文化から、常に潜んでいるのです。

言い換えれば、日本人は完璧でない思考、行動、製品には不満を持つように文化的にプログラムされているのです。

それが「改善」の精神であるとも言えます。

Kaizen - The Art of Continuous Improvement

さて、左右の脳の機能と役割には、科学的に基本的な違いがあることが分かっています。

左脳は、直線的な思考をするようにプログラムされており、日常的に繰り返される身体的な動作、論理的な思考、直接的な言語によるコミュニケーション、事実に基づいた客観的な判断などを行うようになっています。

一方、右側は、感情、直感、人間関係、美学、相互協力、グループ志向、非言語的なコミュニケーションや間接的なスピーチによる調和の維持などを司ると言われています。

もちろん、右脳と左脳の働きには、重なる部分もありますが、基本的な機能は異なっており、どちらの脳が働いているかによって、人の行動や反応は異なってきます。

Difference Between Left Brain and Right Brain

左脳では、宗教や美学などの思考に、一方、客観的で事実に基づかない難解なテーマを考えるときには右脳が活躍します。

この種のテーマが議論になる時、感情的になることからも分かるでしょう。

基本的に右脳型の文化を持つ人の中には、工学、数学、科学研究などの実用的な方法を追求する際に、左脳型の思考に切り替えることができる人がいますが、これは優れた才能と言えます。

このような考え方をする人は、両脳を同時に使うことで恩恵を受けることができます。これはホリスティックシンキングと呼ばれるプロセスです。

そして男性と女性の脳の基本的な方向性にも大きな違いがあります。

左脳型の文化圏では、女性は右脳型の考え方や行動をとる傾向があります。言い換えれば、女性の態度や行動は男性よりも感情的で直感的です。

明らかに女性は男性よりも思いやりがあり、育てやすく、美的感覚に優れているように生まれついています。

nurturing Japanese mother

右脳型の文化圏では、女性は男性よりも右脳型ではない傾向があります。彼女たちは右脳文化の男性よりも思いやりがあり育つ一方で、生存のための特性として、より直接的で現実的な態度や行動をとるのが一般的です。

中国、アメリカ、ドイツ、イギリス、ロシア、イスラエルなど多くの文化が左脳型です。

スペイン語圏、フランス、イタリアなどの文化は、左脳と右脳の思考と行動が組み合わさっていると考えることができます。

地球上で最も右脳的な文化は、日本と南太平洋のポリネシア語圏の国々です。

実際に、日本人の右脳志向が、多くのポジティブな日本文化の特徴の主な原因であることを示す十分な証拠があります。

また、第二次世界大戦後30年足らずで、資源に乏しい小国である日本を経済大国に変えたのも、日本人の右脳志向が大きな役割を果たしたと考えられます。

この驚異的な経済的成長には理由があり、この世の中の不安定な未来においても、日本人にとても有利な特性であと言えます。

次回以降は、左脳・右脳現象と、文豪ボイエ・ラファイエット・デ・モンテの「何故日本人は優秀な人々なのか」という思考を探っていきます。

Why the Japanese are superior people - the advantage of using both sides of your brain

 

ピーナッツバターはありません

ピーナッツバターはありません

ピーナッツバターはありません

ピーナッツバターはありません

もう20年近くも前のことですが、カナダから地元の大工さん達を呼び寄せ、日当たりの良い千葉県でツーバイフォーの家を建てました。

このカナダ人大工さんとの出会いは、最高の僥倖でした。

2 x 4 house wall going up

千葉県の私の地元の小さな住宅会社が倒産し、カナダ人大工が全員解雇された後、大工長はカナダのオンタリオ州に戻っていました。

そして自国に帰ったカナダ人の大工長は、私の依頼で再び美しい日差しが降り注ぐ、この土地に、コンテナ2個分の住宅資材と3人のカナダ人大工を私の所へ送り込み、カナダ製のツーバイフォー材を使って、私の家を建てたのです。

当時でもまだ、彼らの故郷であるカナダと日本の違いは大きく、その日本でカナダ人の熟練したカーペンター達と過ごすのは、とても興味深い経験でした。しかし、彼らは日本での生活に、時に驚き、時に落胆していました。

ある大工さんは、日本の食べ物に馴染めず、古き良きカナダのソウルフードであるピーナッツバターを切望していました。

Peanut Butter

日本人にとってピーナッツバターは比較的新しいものであり、田舎のスーパーマーケットでは、ピーナッツバターは、まだあまり販売されていませんでした。

しかしある日、カナダの田舎ボーイの彼は、スーパーマーケット売り場の壁一面に、ピーナッツバター色をしたペーストが並んでいるコーナーを見て、「ハレルヤ!」と思いました。

ピーナッツバターの楽園を見つけた彼は、それを購入し、ピーナッツバターとジャムのサンドイッチ(PB&J)を食べている自分を想像し、ワクワクしながら家路につきました。

そしてその日、たまたま彼を訪れた私に、そのカナダ人の大工さんは、まだ開封していない容器を見せ、「とうとうピーナッツバターを見つけたんだ!」と希望に溢れた声で言いました。

その瞬間、美味しいピーナッツバターとジャムのサンドイッチを食べて、ホームシックを和らげようとした彼のささやかな希望は、無惨にも現打ち砕かれました。私は心を痛めながら優しく彼に「違うよ、これは味噌という物だよ。」と言いました。

味噌の種類

「違うよ、これは味噌という物だよ。」という言葉を聞いて、は?となった彼は呆然と立ち尽くし「それは何だ?」と聞き返しました。

味噌は日本人の食生活に欠かせないもののひとつです。

味噌汁はもちろん、ドレッシング、野菜ディップや、様々な料理に使うことができる万能調味料です。

味噌の良いところは、発酵食品であり、健康に良いプロバイオティクス(善玉菌)の天然の供給源でもあり、消化にも良く、冷蔵庫で長期保存もできるところです。(それに腸の動きが良くなり、お通じも快調になります。

日本の伝統的な朝食には、ご飯、魚、納豆、漬物のお供として、具沢山の味噌汁が必ず付いてきます。

和風朝食セット焼き魚 おひたし みそ汁

ラーメン屋では、醤油、塩、味噌、豚骨スープの中から好きなものを選ぶことができ、味噌が目玉となっている店も少なくないですね。

1987年1月に初めてラーメンを食べた時、ネギと豚肉がたっぷり入った味噌ラーメンでした。それは今までに食べたことのないような美味しい味噌で作られていて、一目惚れしたものです。

ネギみそラーメン
しかし、私と一緒に食べに行った人が、私がラーメンのスープを全て飲み干してしまったのを見て驚き、訝しげな顔をされたのを覚えています。

そのマナーの悪さを叱られた上に、「ラーメンの味噌汁を全部飲んだら、いつか高血圧で死んじゃうよ 。」という言葉も付け加えられました。

この記事を書いている時点では、私はまだ死んでいないので、ラーメンのスープを全部飲んでも、多分大丈夫でしょう。

最近では、スープを全部飲んだ方が、捨てるより環境にもいいし、マナーも悪くないと聞いたことがあります。

Wall Of Miso

ピーナッツバター関連のエピソードをもう一つ。世界最大である日本の合成紙会社の工場で、アメリカ人エンジニアの通訳をしていた時の話です。この日本企業はいつも昼食に美味しい日本式の幕内弁当を用意してくれていました。しかし、あるアメリカ人エンジニアは日本の美味しい食べ物に一切興味を示さず、毎日ピーナッツバターとジャムのサンドイッチを工場に持って来ていました。冒険心のない彼は毎日、コーラでPB&Jサンドイッチを飲み下していました。私は毎日、「今日のPB&Jサンドはどう?」と聞きました。すると彼の答えはきまって、「いつもと同じだよ。」でした。